学術大会概要

大会長挨拶

大会長挨拶

服部 信孝

第63回日本神経学会学術大会
大会長 服部 信孝
順天堂大学大学院医学研究科神経学教授

 第63回日本神経学会学術大会を、2022年5月18日(水)から21日(土)まで、東京国際フォーラムで開催させていただくことになりました。東京で開催されるのは水澤英洋先生が第54回大会を開催した以来で9年ぶりとなります。また、順天堂大学神経学講座がホストを務めるのは23回大会(楢林博太郎先生)、45回(水野美邦先生)と今回3回目で3代に渡って大会長を仰せつかったことになり、大変光栄なことであり教室員一同誠心誠意準備を進めているところです。2019年以来の新型コロナウィルス感染症の世界的蔓延により61, 62回の2大会ともハイブリッド方式による大会運営になり、現地参加が難しい会員のみなさんが多数を占めておりました。現在、ワクチン接種が進んでおりますので、何とか63回大会はみなさんと現地会場で直接お目にかかれるよう切に祈っております。

 今大会のテーマは「幸福100年社会における脳神経内科学の展望−AI技術との共存に向けて」です。2020年に発表された2016年の日本人の平均寿命は、男性は81.1歳(世界第2位)、女性は87.1歳(世界第1位)であり、百歳以上の人口は8万人を超えております。更にWHOの予想では2007年に生まれたお子さん(15歳)の半分は107歳の寿命であるとのレポートを発表している。先進国の中でも高齢化率が高く1970年に高齢化社会、2007年には超高齢社会に突入しました。高齢化は更に進んでおり2025年には約30%、2060年には約40%に達すると予想されています。まさしく人生100年時代を迎えようとしている今、脳神経内科の役割は益々大きくなることは間違いないどころか、不可欠な存在感を増すものと言えます。事実、脳神経内科の取り扱う疾患の多くは、加齢が重要な危険因子であります。言い換えればアンチエイジングこそ疾患修飾療法の中心であり、小児神経疾患と成人神経疾患の対比こそ新たなヒントに繋がると考えております。たとえば疾患によっては小児期と成人期で異なる臨床症状を呈しており、同じ疾患でありながら全く異なる表現型を呈することも少なくありません。よって本大会ではChild Neurologistによるシンポジウムを企画させて頂きました。また若手神経内科医によるシンポジウムも今回はじめて企画させて頂きました。若手からシニアまで活性化できるような大会を目指して、プログラムを企画したいと思っております。最近では、”One gene not One phenotype”であり、分子生物学の進歩により遺伝子−表現型においても複雑な機構が存在している可能性が示されています。神経変性疾患では残存細胞における蛋白封入体の存在から蛋白分解系の関与が重要視されていますし、その機序は我々が思っている以上に複雑であることが分かってきました。是非とも最新知見を学んで頂ければと思います。加えてグローバル化を推進して、特にアジアにおける日本のリーダーとしての位置づけを明確に出来ればと考えております。近未来では医師に代わって人工知能が診断や治療方針を決定するかも知れません。しかし、あくまでもIT, AIを使い、正しい方向に導くのは我々であります。如何に上手に利用するかが大事なのは言うまでもありません。

 大会のポスターでは、東京の街並み、遺伝子、乳児からそして車椅子に乗る老人を押すロボットも登場します。中心は光り輝く脳をイメージして明るい脳神経内科の未来を想像出来るようなデザインにしました。大都市東京の地で、幸福100年時代における脳神経内科の展望について考えていただく機会にして頂ければと熱望致します。多数の皆様のご参加をお待ちしております。

服部 信孝