臨床神経学

症例報告

慢性硬膜下血腫に伴う一過性神経脱落症状の1例

石内 実紗1)*, 稲富 雄一郎1), 山村 理仁2)3), 中島 誠4), 米原 敏郎1)

1)済生会熊本病院脳神経内科
2)済生会熊本病院脳神経外科
3)阿蘇医療センター脳神経外科
4)熊本大学大学院生命科学研究部脳神経内科学分野

62歳,男性,右利き.無症候性の両側慢性硬膜下血腫を指摘され,左側のみ血腫除去術を受けた.術後1カ月後の某日より,右上肢の異常感覚と発語失行を伴う5〜10分の発作が,1〜2回/日出現するようになり,当院に入院した.血腫の再拡大はなかったが,左側の血腫隣接部では,円蓋部脳溝にFLAIRで高信号となる変化を認め,SPECT上は集積が低下していた.脳波では異常なく,CT血管造影では血腫による左中大脳動脈の軽度偏倚を認めた.発作は10日間で消失した.本例では慢性硬膜下血腫に伴う脳虚血に関連した,一過性神経脱落症状を呈した可能性が考えられた.
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(臨床神経, 64:422−426, 2024)
key words:慢性硬膜下血腫,一過性神経脱落症状,一過性脳虚血発作,てんかん,皮質拡散脱分極

(受付日:2024年1月22日)