臨床神経学

症例報告

神経症状が先行し,上肢に出現した非典型的な皮疹から診断し得た皮膚動脈炎による血管炎性ニューロパチーの1例

中村 大和1),宇佐美 清英1)2)* ,谷口 智彦1)3),中島 沙恵子4),加来 洋4),橋 良輔1)

1)京都大学大学院医学研究科臨床神経学
2)JCHO 大和郡山病院脳神経内科
3)静岡県立総合病院脳神経内科
4)京都大学医学部附属病院皮膚科

33歳女性.アトピー性皮膚炎に対して加療中に右手掌の異常感覚が出現し,3ヶ月の経過で異常感覚,筋力低下が四肢に拡大し入院した.右三角筋,右第一背側骨間筋,右前脛骨筋などに筋力低下を認め,神経伝導検査では多発性単神経炎が示唆された.入院直前に前腕に小径の皮疹が出現したが,下肢には皮疹を認めず,性状や分布からは血管炎を疑いにくいとされた.しかし神経所見を考慮すれば血管性病態の評価が不可欠であり,生検の結果中径動脈の血管炎が示唆され,皮膚動脈炎に伴う血管炎性ニューロパチーと診断した.多発性単神経炎を疑う場合には全身の皮疹の検索と積極的な皮膚生検が診断に資すると考えられる.
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(臨床神経, 64:33−38, 2024)
key words:多発性単神経炎,皮膚動脈炎,結節性多発動脈炎,デュピルマブ,COVID-19

(受付日:2023年8月4日)