臨床神経学

症例報告

下位運動ニューロン障害を初発症状とする脊髄小脳失調症2型の1例

松下 愛実1),中村 善胤1)*,細川 隆史1),橋 祐二2),水澤 英洋2),荒若 繁樹1)

1)大阪医科薬科大学内科学IV教室脳神経内科
2)国立精神・神経医療研究センター病院

症例は36歳男性.35歳時より感覚障害を伴わない左母指筋力低下,左母指球筋と左第一背側骨間筋の萎縮が出現した.神経伝導検査で左正中神経に複合筋活動電位振幅低下とF波出現率低下,針筋電図検査で左短母指外転筋に陽性鋭波を認めた.頭部MRIで両側小脳半球は萎縮し,母方祖母と母の兄弟が脊髄小脳変性症と判明した.その後,両下肢失調が現れ遺伝子検査でATXN2遺伝子CAGリピート数の伸長(19/39)を認めた.下位運動ニューロン障害が初発症状の脊髄小脳失調症2型と診断した.ATXN2遺伝子リピート伸長を示す同一家系内で小脳失調症と運動ニューロン障害を呈することが報告されており興味ある症例と考え報告する.
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(臨床神経, 64:28−32, 2024)
key words:脊髄小脳失調症2型,下位運動ニューロン障害,筋萎縮性側索硬化症,ATXN2遺伝子

(受付日:2023年7月26日)