臨床神経学

症例報告

会話中に頻繁に笑う行動障害型前頭側頭型認知症の1例

石原 健司1)*, 旭 俊臣1)

Corresponding author: 旭神経内科リハビリテーション病院神経内科〔〒270-0022 千葉県松戸市栗ヶ沢789-1〕
1) 旭神経内科リハビリテーション病院神経内科

会話中に頻繁に笑う行動障害型前頭側頭型認知症(behavioral variant frontotemporal dementia,以下bvFTDと略記)の1例を報告した.症例は72歳,男性,右利き.自発性低下,無銭飲食などの異常行動を主訴に受診した.神経学的所見として,歩行時のすり足と速度低下を認め,会話はおうむ返しの傾向があった.また会話中に頻繁に笑う,という症状が見られ,多幸的な印象を受けた.頭部MRI で両側前頭葉萎縮,脳血流SPECTで同部位の血流低下を認め,経過,症状と合わせてbvFTDと診断した.bvFTDでは笑うことが少ないとされているが,多幸的な症例では頻繁に笑う場合があると考えられた.また,笑いの背景に,感情表現の障害,共感の喪失が関与している可能性が推察された.
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(臨床神経, 63:523−527, 2023)
key words:行動障害型前頭側頭型認知症,笑い,多幸症,前頭葉

(受付日:2023年4月20日)