臨床神経学

症例報告

抗titin抗体・抗Kv1.4抗体を伴う炎症性筋疾患を合併した,抗AChR抗体陽性眼筋型重症筋無力症の1例

布施 絢史郎1), 荒木 周1), 両角 佐織1), 安井 敬三1)*, 數田 知之2)3), 野田 成哉2)4), 勝野 雅央2)5)

Corresponding author: 日本赤十字社愛知医療センター名古屋第二病院脳神経内科〔〒 466-8650 愛知県名古屋市昭和区妙見町 2-9〕
1) 日本赤十字社愛知医療センター名古屋第二病院脳神経内科
2) 名古屋大学大学院医学系研究科神経内科学
3) 中東遠総合医療センター脳神経内科
4) 国立病院機構鈴鹿病院脳神経内科
5) 名古屋大学大学院医学系研究科臨床研究教育学

症例は84歳男性.77歳時から抗アセチルコリン受容体(acetylcholine receptor,以下AChRと略記)抗体陽性の眼筋型重症筋無力症(ocular myasthenia gravis,以下OMGと略記)として加療されていた.右上腕の筋肉に硬結と疼痛が出現し四肢に広がった.血清抗AChR抗体価とCK値が高値で,MRIで複数の筋肉に炎症を示唆する信号変化を認めた.胸腺腫を認めず抗titin抗体と抗Kv1.4抗体が陽性であり,筋生検により炎症性筋疾患(inflammatory myopathy,以下IMと略記)と診断した.OMGに合併したIMは相対的に軽症である.加齢に伴う免疫寛容の低下がOMGとIMの両方の病態に関与している可能性があり,血清抗AChR抗体価による疾患活動性の評価や抗横紋筋抗体による予後予測が有用である.
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(臨床神経, 63:830−835, 2023)
key words:眼筋型重症筋無力症,炎症性筋疾患,抗AChR抗体,抗titin抗体,抗Kv1.4抗体

(受付日:2023年7月20日)