臨床神経学

症例報告

頭部外傷後に急性の経過で両側失明し,可逆性脳血管攣縮症候群が疑われた1例

藤井 勇基1), 北國 圭一1)*, 千葉 隆司1), 高橋 和沙1)4), 三村 達哉2), 大場 洋3), 園生 雅弘1)5), 小林 俊輔1)

Corresponding author: 帝京大学医学部脳神経内科〔〒173-8605 東京都板橋区加賀2-11-1〕
1) 帝京大学医学部附属病院脳神経内科
2) 帝京大学医学部附属病院眼科
3) 帝京大学医学部附属病院放射線科
4) 北里大学脳神経内科
5) 帝京大学医療技術学部視能矯正学科

症例は62歳男性.頭部外傷2日後の急性両側失明のために当科に入院した.頭部MRIでは小脳の出血 性梗塞を認め,頭部MRAでは末梢動脈の描出不良を認めた.急性発症の失明で視神経炎を鑑別に挙げ診断的治療としてステロイド治療を施行したが視力に改善はみられなかった.9日後のMRA再検では,動脈の描出に改善を認め,可逆性脳血管攣縮症候群(reversible cerebral vasoconstriction syndrome,以下RCVSと略記)が示唆された.当初,眼底検査では視神経乳頭の異常は認められなかったが約1か月後から視神経萎縮が出現し,後部虚血性視神経症の可能性が示唆され,RCVSが誘因と考えられた.
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(臨床神経, 63:824−829, 2023)
key words:急性両側視力障害,可逆性脳血管攣縮症候群,虚血性視神経症

(受付日:2023年5月22日)