臨床神経学

短報

子宮内膜症により下垂足と月経時に出現する下肢の異常感覚を呈した40歳女性例

上田 優樹1)*, 木村 亮之2), 藤森 浩司3), 勇内山 大介4), 田口 丈士1), 赫 寛雄2)

Corresponding author: 東京医科大学八王子医療センター脳神経内科〔〒193-0998 東京都八王子市館町1163〕
1) 東京医科大学八王子医療センター脳神経内科
2) 東京医科大学神経学分野
3) キッコーマン総合病院産婦人科
4) 東京医科大学放射線医学分野

症例は40歳女性.月経時に出現する右下腿と足背の異常感覚,右腰殿部と大腿部の疼痛が出現し,他院で腰椎椎間板ヘルニアと診断された.発症13ヶ月後から右下垂足が出現し,当院を受診した.右坐骨神経領域の筋力低下と感覚障害に加え,神経伝導検査における右浅腓骨神経と腓腹神経の感覚神経活動電位の振幅低下から,骨盤内の病変が示唆された.骨盤部MRIで右卵巣から坐骨神経にかけて異常信号を認め,子宮内膜症による坐骨神経障害と診断した.ホルモン治療を開始して症状は軽快したが,下垂足が残存した.女性で月経時に悪化・出現する坐骨神経痛や下肢の感覚・運動障害では,子宮内膜症の可能性を考慮する必要がある.
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(臨床神経, 63:676−679, 2023)
key words:坐骨神経障害,子宮内膜症,下垂足,坐骨神経痛,周期性

(受付日:2023年5月26日)