臨床神経学

症例報告

妊娠悪阻を契機に診断に至った極長鎖アシルCoA脱水素酵素欠損症の1例

白石 渉1)2)*, 立石 貴久2)3), 林田 翔太郎2), 但馬 剛4)5), 津村 弥来4), 磯部 紀子2)

Corresponding author: 小倉記念病院脳神経内科〔〒802-8555 福岡県北九州市小倉北区浅野3丁目2-1〕
1) 小倉記念病院脳神経内科
2) 九州大学大学院医学研究院神経内科学
3) 久留米大学医学部内科学講座呼吸器・神経・膠原病内科部門
4) 国立成育医療研究センター研究所マススクリーニング研究室
5) 広島大学大学院医系科学研究科小児科学

症例は25歳女性,12歳から横紋筋融解症を繰り返していた.妊娠悪阻による飢餓を契機に横紋筋融解症が再燃し,当科紹介となった.血液検査でCK値の上昇と,総カルニチンの低下を認めた.末梢血リンパ球のpalmitoyl-CoA dehydrogenase活性が低値であり,極長鎖アシルCoA脱水素酵素(very-long-chain acyl-coenzyme A dehydrogenase,以下VLCADと略記)欠損症と診断した.ACADVL遺伝子のc.1349G>A(p.R450H)変異に加え,c.1332G>A変異との複合ヘテロ変異を認めた.VLCAD欠損症は脂肪酸酸化異常症の一つで,横紋筋融解症を生じうる.未診断のVLCAD欠損症が妊娠悪阻を契機に診断に至ることがある.
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(臨床神経, 63:656−660, 2023)
key words:横紋筋融解症,カルニチン,極長鎖アシルCoA脱水素酵素欠損症,高CK血症,妊娠悪阻

(受付日:2023年3月7日)