臨床神経学

症例報告

頭頂葉白質上縦束病変により日本語と英語の混同を呈したバイリンガル失語の1例―機能的MRIおよび拡散テンソル画像を用いた検討―

澤木 優治1)*, 山本 裕泰2), 本村 和也3), 山本 正彦4), 古川 研治5), 斉藤 修6)

Corresponding author: 釧路孝仁会記念病院 リハビリテーション部〔〒085-0062 北海道釧路市愛国191-212〕
1) 釧路孝仁会記念病院リハビリテーション部
2) 名古屋大学医学部附属病院リハビリテーション部
3) 名古屋大学大学院医学系研究科脳神経外科学
4) 愛知学院大学心身科学部
5) 釧路孝仁会記念病院診療放射線部
6) 釧路孝仁会記念病院脳神経外科

左頭頂葉白質を中心とした脳梗塞により第一言語である日本語と第二言語である英語の混同および音韻性錯語を呈した左利きバイリンガル症例について報告した.症例は日本語および英語のバイリンガルである46歳の左利き女性であった.本症例では発症急性期より理解面は聴覚・視覚のいずれの経路も良好に保たれた一方で,表出面においては日本語発話時に日本語と英語の混同を認めた.拡散テンソル画像の分析から,本例の言語症状の出現には左下頭頂小葉直下の白質線維である上縦束や弓状束の関与が示唆された.
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(臨床神経, 62:707−715, 2022)
key words:バイリンガル,失語,言語の混同,上縦束,拡散テンソル画像

(受付日:2021年9月27日)