臨床神経学

症例報告

向精神薬の中断により発症した悪性症候群の1例

高橋 祥也1)*, 谷口 昌光2), 谷口 央2), 冨樫 厚仁1), 鈴木 光典3)

Corresponding author: 至誠堂総合病院内科〔〒990-0045 山形県山形市桜町7-44〕
1) 至誠堂総合病院内科
2) 至誠堂総合病院脳神経内科
3) 至誠堂総合病院整形外科

症例は統合失調症と糖尿病を有する71歳女性.右化膿性膝蓋前滑液包炎のため服薬が困難となり向精神薬を中断した.中断5日後から40°Cを超える発熱,高度の意識障害と鉛管様筋強剛,頻呼吸と高血圧を認めた.向精神薬中断により発症した悪性症候群(neuroleptic malignant syndrome,以下NMSと略記)と診断した.ダントロレンの投与と全身管理で軽快した.本例を含めた向精神薬の中断で発症したNMS本邦報告例についてその臨床的特徴を検討した.向精神薬を中断する際には,NMSを念頭においた診療が求められる.特に早期のNMSの発症は重篤化のリスクを示唆しており,より厳格な管理が必要と考える.
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(臨床神経, 62:850−855, 2022)
key words:向精神薬中断,悪性症候群,cholinergic rebound

(受付日:2022年3月18日)