臨床神経学

症例報告

突然の構音障害と左上肢麻痺で搬送され脳卒中との鑑別を要した高齢発症重症筋無力症の1例

山口 裕佳1), 藤本 武士1)* , 林 信孝1)2), 鳥村 大司1), 前田 泰宏1), 辻野 彰2)

Corresponding author: 佐世保市総合医療センター脳神経内科〔〒857-8511 長崎県佐世保市平瀬町9番地3〕
1) 佐世保市総合医療センター脳神経内科
2) 長崎大学病院脳神経内科

症例は80歳女性.構音障害,左上肢麻痺を主訴に脳卒中を疑われて当院救急搬送となった.入院第6日目に呼吸状態の悪化を認め,人工呼吸器管理となった.呼吸不全の原因精査を行なったところ,筋特異的チロシンキナーゼ抗体陽性が判明し重症筋無力症(myasthenia gravis,以下MGと略記)の診断となった.免疫療法を行い,徐々に症状の改善がみられ,約3ヶ月後には人工呼吸器からの完全離脱も可能となった.高齢発症MGでは症状変動の訴えに乏しく突然の嚥下障害,構音障害といった脳卒中様症状(stroke mimic)を呈した報告もある.高齢発症MGでは病歴上日内変動が明らかでなく,時に併存疾患の存在などで初期診断に難渋することがあり注意が必要である.
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(臨床神経, 61:234−238, 2021)
key words:重症筋無力症,脳卒中,MuSK 抗体,構音障害,呼吸不全

(受付日:2020年7月27日)