臨床神経学

症例報告

相貌および声を介した人物同定障害を呈しアルツハイマー型認知症が疑われた1例

石原 健司1)*, 金子 清佳2), 高橋 伸佳1), 旭 俊臣1)

Corresponding author: 旭神経内科リハビリテーション病院神経内科〔〒270-0022 千葉県松戸市栗ヶ沢789-1〕
1) 旭神経内科リハビリテーション病院神経内科
2) 旭神経内科リハビリテーション病院リハビリテーション科

相貌および声を介した人物同定障害を呈した90歳,女性例を報告した.全般的な認知機能低下を認めたが,相貌以外の視覚性認知機能は保持.人物同定障害の内容として家族など親密度の高い人物は相貌,声による同定可能,有名人の相貌,声は同定困難であったが,既知感はあり名前の記憶は保持されていた.新規の人物は相貌,声ともに同定できなかった.画像検査では右優位の両側側頭葉前部萎縮と右側頭極を中心とした血流低下を認めた.相貌認知障害を含む進行性の人物同定障害は,右優位に側頭葉前部の萎縮を呈する前頭側頭葉変性症として捉えられているが,本例では行動異常や精神症状は認めず,アルツハイマー型認知症の可能性が考えられた.
Full Text of this Article in Japanese PDF (3674K)      Full Text of this Article in Japanese HTML

(臨床神経, 61:182−187, 2021)
key words:相貌認知障害,人物同定障害,アルツハイマー型認知症,前頭側頭葉変性症,右側頭葉

(受付日:2020年7月7日)