臨床神経学

症例報告

統合失調症の治療中に頸部の捻転ジストニアと小脳失調を呈し,dystonia with marked cerebellar atrophyが疑われた1例

星野 優美1)2)*, 山嵜 正志2), 望月 祐介2), 牧下 英夫2), 吉田 邦広3)

Corresponding author: 信州大学医学部脳神経内科,リウマチ・膠原病内科〔〒390-8621 長野県松本市旭3-1-1〕
1) 信州大学医学部付属病院脳神経内科,リウマチ・膠原病内科
2) 北信総合病院脳神経内科
3) 信州大学医学部神経難病学講座神経遺伝学部門

46歳男性,25歳より統合失調症として抗精神病薬にて加療,35歳から頸が左に捻れ,増悪した.軽度の小脳失調,両眼の黄斑ジストロフィーも認めた.頭部MRIでは小脳萎縮と両側視床病変がみられた.家族歴はなく,遺伝学的検査では主要な脊髄小脳失調症病型は否定され,全エクソーム解析でも運動障害に関連した1,643の遺伝子に病的バリアントはみられなかった.薬剤性の遅発性ジストニアの関与が否定できないものの,dystonia with marked cerebellar atrophy(DYTCA)の概念に矛盾しないと思われた.黄斑ジストロフィー,視床病変がDYTCAに関連する可能性が考えられた.
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(臨床神経, 60:520−526, 2020)
key words:頸部ジストニア,小脳萎縮,視床病変,黄斑ジストロフィー

(受付日:2019年11月16日)