臨床神経学

症例報告

繰り返す右心不全で発症し,強力な免疫治療でクリーゼを脱した抗MuSK抗体陽性重症筋無力症の1例

松本 泰子1)*, 島 啓介1)2), 山口 和由1), 清水 愛3)

Corresponding author: 石川県立中央病院神経内科〔〒920-8530 石川県金沢市鞍月東2-1〕
1) 石川県立中央病院脳神経内科
2) 富山県立中央病院脳神経内科
3) 国立病院機構金沢医療センター脳神経内科

右心不全を繰り返し,最終的にCO2ナルコーシスとなり,人工呼吸器装着に至った45歳女性.顔面や四肢の筋無力症状は認めず,反復刺激誘発筋電図でwaningなく,筋力低下がないためエドロホニウムテストも評価困難であり,抗MuSK抗体陽性のみで重症筋無力症(myasthenia gravis,以下MGと略記)と診断した.選択的血漿交換が奏功せず,大量免疫グロブリン療法,タクロリムス,プレドニゾロン内服免疫治療を追加した.その後,症状軽快したものの,呼吸器離脱に至らず,単純血漿交換を更に追加して約5か月で完全離脱した.再発性右心不全というMGとして稀な初発症状であった点,および,抗MuSK抗体陽性だけが診断根拠であった点が,MG診断に示唆に富むと考えた.
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(臨床神経, 60:791−794, 2020)
key words:抗MuSK抗体,重症筋無力症,右心不全,初発症状

(受付日:2020年5月8日)