臨床神経学

短報

抗結核化学療法中に奇異性反応として胸水貯留が出現した結核性髄膜炎が示唆された1例

荒井 元美1)*, 稲葉 龍之介2)

Corresponding author: 聖隷三方原病院神経内科〔〒433-8558 静岡県浜松市北区三方原町3453〕
1)聖隷三方原病院神経内科
2)聖隷三方原病院呼吸器内科

症例は87歳,男性である.発熱と意識障害で急性発症した.低Na血症,および髄液の単核球増多とアデノシンデアミナーゼ(ADA)高値などから結核性髄膜炎を強く疑ってイソニアジド,リファンピシンとピラジナミドを開始し,3日後に症状は軽減した.髄液所見も改善したが,約40日後に胸水貯留が認められた.リンパ球優位の滲出性胸水で胸水ADA高値から結核性胸水と診断したが,結核菌は検出されなかった.五苓散の内服を開始した8日後の胸部CTで胸水減少がみられ,低Na血症と低蛋白血症も改善した.結核性髄膜炎に伴う奇異性反応は水頭症や結核腫の他,中枢神経系外に生じることを念頭に置く必要がある.
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(臨床神経, 59:541−544, 2019)
key words:結核性髄膜炎,結核性胸膜炎,奇異性反応,抗利尿ホルモン分泌異常症候群,漢方薬五苓散

(受付日:2019年4月1日)