臨床神経学

症例報告

神経学的症候出現時に関節症状を認めない抗cyclic citrullinated peptides抗体陽性のリウマチ性髄膜炎の1例

安部 鉄也1)*, 三島 一彦2), 内野 晃3), 佐々木 惇4), 棚橋 紀夫1), 尾 昌樹1)

Corresponding author: 埼玉医科大学国際医療センター脳卒中内科〔〒350-1298 埼玉県日高市山根1397-1〕
1)埼玉医科大学国際医療センター脳卒中内科
2)埼玉医科大学国際医療センター脳脊髄腫瘍科
3)埼玉医科大学国際医療センター画像診断科
4)埼玉医科大学病院病理診断部

症例は84歳女性.緩徐進行性の認知機能障害の経過中に失行が出現した.神経学的所見は認知機能障害,失行に加え左上下肢の筋力低下を認めた.頭部magnetic resonance imaging(MRI)で右側頭頭頂葉の髄膜のfluid attenuated inversion recovery(FLAIR),diffusion weighted Imaging(DWI)高信号を認め造影効果を有し,血液検査で抗cyclic citrullinated peptides(CCP)抗体が高値であった.脳生検ではくも膜下腔を中心とした炎症細胞浸潤を認めた.ステロイドで加療し臨床症候,検査所見ともに改善した.全経過を通じて関節症状は認めていない.本例は慢性髄膜炎の診断治療を考える上で貴重な症例である.発症時に関節症状のないリウマチ性髄膜炎の報告は稀で,本例では特に抗CCP抗体が高値であり,リウマチ性髄膜炎の発症機序を考える上でも稀有な症例である.
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(臨床神経, 56:627−632, 2016)
key words:リウマチ性髄膜炎,関節リウマチ,抗CCP抗体

(受付日:2016年5月18日)