臨床神経学

症例報告

広範な脊髄神経根障害をみとめた胃原発悪性リンパ腫の1例

佐藤 正行1), 古田みのり1), 平柳 公利1), 長嶺 俊1), 牧岡 幸樹1), 池田 佳生1)*

Corresponding author: 群馬大学大学院医学系研究科脳神経内科学〔〒371-8511 前橋市昭和町3-39-22〕
1)群馬大学大学院医学系研究科脳神経内科学

症例は57歳男性.56歳時に胃原発のびまん性大細胞型B細胞性リンパ腫(diffuse large B-cell lymphoma; DLBCL)を発症し,R-CHOP療法により寛解状態であった.左上肢の疼痛と筋力低下で発症し,亜急性に四肢筋力低下が進行し入院した.脊髄造影MRIで上位頸髄から腰仙髄・馬尾まで広範囲に神経根の造影効果をみとめ,髄液検査では糖値の著明な低下と神経伝導検査では正中神経と尺骨神経でF波出現率の低下をみとめた.髄液細胞診をくりかえしneurolymphomatosisをきたしたDLBCLの再発と診断した.高用量メトトレキサート療法を施行したが治療効果に乏しく,完全四肢麻痺へ移行した.DLBCLは広範な脊髄神経根障害を呈して再発することがあり注意が必要である.
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(臨床神経, 55:333−338, 2015)
key words:びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫,neurolymphomatosis,髄液細胞診,脊髄神経根障害

(受付日:2014年5月15日)