臨床神経学

症例報告

多発性単神経炎を呈し緩徐進行性の運動障害を主徴とした原発性シェーグレン症候群の1例

齋藤 万有1), 林 信太郎1), 鎌田 崇嗣1), 村井 弘之1), 尾本 雅俊2), 吉良 潤一1)*

Corresponding author: 九州大学大学院医学研究院神経内科学〔〒812-8582 福岡県福岡市東区馬出3-1-1〕
1)九州大学大学院医学研究院神経内科学
2)山口大学大学院医学系研究科神経内科学

症例は45歳女性.38歳より右手指の伸展障害が出現,その後数年かけて左側,次いで右側の下垂足が出現した.腱反射は右上肢と両下肢で減弱し,左下肢遠位部に軽度の異常感覚を認めた.神経伝導検査は軸索障害パターン,針筋電図検査で慢性神経原性所見を認めた.血清抗SS-A抗体と唾液腺病理所見が陽性.腓腹神経生検では神経束内の有髄神経線維脱落の分布に差異があり小血管周囲に炎症細胞浸潤を認めた.シェーグレン症候群に伴う多発性単神経炎と診断,免疫療法を行い一部の筋力に改善がみられた.本例が年余に亘る緩徐進行性の運動優位多発性単神経障害を示した点は,同症候群に合併する末梢神経障害として特異である.
Full Text of this Article in Japanese PDF (494K)

(臨床神経, 55:753−758, 2015)
key words:シェーグレン症候群,多発性単神経障害,血管炎,運動障害,慢性

(受付日:2015年4月8日)