臨床神経学

短報

撓骨神経麻痺が前景に立った神経痛性筋萎縮症の1例

坪井 博文1), 菅野 直人1)*, 西山 亜由美1), 竪山 真規1), 青木 正志1)

Corresponding author: 東北大学大学院医学系研究科神経・感覚器病態学講座神経内科学分野〔〒980-8574 仙台市青葉区星陵町1-1〕
1)東北大学大学院医学系研究科神経・感覚器病態学講座神経内科学分野

症例は28歳男性である.左上腕外側の痛みと下垂手で発症,左橈骨神経麻痺の診断で保存的に加療を受けるも左上肢の筋力低下,筋萎縮,しびれ感が残存し当科受診した.神経学的には左三角筋,総指伸筋,棘上筋,棘下筋,前鋸筋などに筋力低下をみとめ,左上腕外側から手背に帯状に表在覚低下と錯感覚をみとめた.電気生理学的検査と画像検査をあわせて検討したところ腕神経叢の散在性障害が明らかとなり,経過より神経痛性筋萎縮症と診断した.本症例は当初より橈骨神経本幹の麻痺が前景に立っており非典型的であった.臨床的に橈骨神経麻痺がみられたばあい,神経痛性筋萎縮症の可能性も念頭におき鑑別をおこなう必要があると考えられた.
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(臨床神経, 53:312−315, 2013)
key words:神経痛性筋萎縮症,橈骨神経麻痺,腕神経叢,多発性単神経炎

(受付日:2012年7月25日)