臨床神経学

症例報告

感覚性ニューロパチーが先行し,腫瘍寛解後に辺縁系脳炎を発症した抗Hu抗体陽性傍腫瘍性神経症候群の1例

深見 祐樹1), 梅村 敏隆1)*, 下野 哲典1), 横井 孝政1), 上條 美樹子1), 榊原 敏正1)2)

Corresponding author: 中部労災病院神経内科〔〒455-8530 愛知県名古屋市港区港明1丁目10番6号〕
1)中部労災病院神経内科
2)現:尾張温泉リハビリかにえ病院

症例は68歳男性である.65歳時から四肢遠位部の感覚障害が徐々に進行し,傍腫瘍性神経症候群をうたがうも悪性腫瘍は指摘できず,ステロイドや免疫グロブリン療法にも反応しなかった.原因不明の感覚性ニューロパチーとして経過をみたが,その後胸部CTで縦隔リンパ節腫大をみとめ,小細胞肺癌と診断された.化学療法を開始し腫瘍の消失をみとめたが,その半年後より記銘力障害が出現した.頭部MRIで海馬周囲に異常信号域をみとめ,抗Hu抗体が強陽性であったことから傍腫瘍性感覚性ニューロパチーと辺縁系脳炎の合併と考えられた.腫瘍消失後に傍腫瘍性辺縁系脳炎を合併した報告例はなく,寛解後も神経障害がおこりえることを認識する必要がある.
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(臨床神経, 53:287−292, 2013)
key words:傍腫瘍性神経症候群,辺縁系脳炎,小細胞肺癌,抗Hu抗体,腫瘍寛解期

(受付日:2012年7月8日)