臨床神経学

短報

抗N末端α―エノラーゼ抗体をみとめた急性小脳失調症の1例

山本 幹枝1)*, 和田 健二1), 米田 誠2), 土井 浩二1), 古和 久典1), 中島 健二1)

Corresponding author: 鳥取大学医学部医学科脳神経医科学講座脳神経内科学分野〔〒683-8504 鳥取県米子市西町36-1〕
1)鳥取大学医学部医学科脳神経医科学講座脳神経内科学分野
2)福井大学医学部病態制御医学内科学2

症例は61歳,男性である.急性の小脳失調をきたし救急入院となった.頭部MRI上,小脳萎縮はなく,脳血流SPECTで小脳虫部の血流低下をみとめた.髄液検査では蛋白が軽度上昇し,甲状腺機能低下はごく軽度であったが,抗TPO抗体や抗N末端α―エノラーゼ(NAE)抗体をみとめたため,抗NAE抗体陽性脳症による急性小脳失調症と診断した.症状は3週間で自然軽快し,独歩にて退院となった.急性小脳失調症の鑑別として橋本脳症を考慮すべきと思われた.
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(臨床神経, 50:581−584, 2010)
key words:橋本脳症,抗NAE抗体,急性小脳失調症

(受付日:2010年3月3日)