臨床神経学

症例報告

高齢で発症し労働後のこむら返りを反復したsarcoglycanopathyの1例

中尾 紘一1)4)*, 矢澤 省吾1), 林 由起子2), 西野 一三2), 塩見 一剛3), 中里 雅光3)

Corresponding author:自治医科大学医学部内科学講座神経内科学部門〔〒329-0498 栃木県下野市薬師寺3311-1〕
1)宮崎県立延岡病院脳神経センター神経内科
2)国立精神・神経センター神経研究所疾病研究第一部
3)宮崎大学医学部内科学講座神経呼吸内分泌代謝学分野
4)現 自治医科大学医学部内科学講座神経内科学部門

症例は61歳の男性である.職業は林業.生来健康でとくに問題なし.59歳頃より労作後に両上肢のこむら返り,脱力・しびれ感と筋の把握痛をくりかえし,CKの上昇からその度に横紋筋融解症と診断され治療されていた.しかし,下肢筋MRIでの両側の長内転筋,大腿二頭筋,半腱様筋の異常信号から肢帯型筋ジストロフィーをうたがって筋生検をおこない,α-sarcoglycanの欠損からsarcoglycanopathyと診断にいたった.本症の成人例の報告はまれである.また,本例では他に原因の説明ができない末梢神経障害をみとめた.高齢者でも労作後にこむら返りをくりかえす症例では本症の可能性も念頭におき,確定診断には筋生検をおこなう必要があると考えられた.
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(臨床神経, 49:167−171, 2009)
key words:sarcoglycanopathy, 高齢発症, こむら返り, 末梢神経障害, 高CK血症

(受付日:2008年4月1日)