臨床神経学

短報

血清・髄液中抗グルタミン酸受容体抗体陽性が診断を混乱させたglioblastomaの1例

六反田 拓1), 稲富 雄一郎1), 米原 敏郎1), 高橋 幸利2), 平野 照之3), 内野 誠3)

1)済生会熊本病院脳卒中センター神経内科〔〒861-4193 熊本市近見5-3-1〕
2)国立病院機構静岡てんかん・神経医療センター小児科
3)熊本大学大学院医学薬学研究部神経内科学分野

53歳の男性例を報告する.意識消失や地誌的障害の発作が計4回出現した.初発3カ月後の抗グルタミン酸受容体抗体(抗GluR抗体)が髄液IgGε2,血清IgMε2で陽性であり,臨床症状と合わせて辺縁系脳炎がうたがわれた.頭部MRIではT2強調画像とFLAIRで脳梁膨大部から側頭葉内側白質にかけて高信号を呈し,側脳室周囲白質では,その一部が拡散強調像で高信号を呈し,Gd-DTPAで淡く増強される病変をみとめた.発症4カ月後には右手の感覚障害も出現し,血清IgGε2が陽性となった.MRIで後角周囲白質病変はより強いリング上増強像を呈し,脳生検にてglioblastomaと診断された.
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(臨床神経, 48:497−500, 2008)
key words:抗グルタミン酸受容体抗体, glioblastoma, 辺縁系脳炎, MRI

(受付日:2007年3月30日)