臨床神経学

症例報告

左上大静脈遺残を介したと考えられる奇異性脳塞栓症の1例

近藤 啓太1), 野田 公一2), 越智 一秀1)2), 野村 栄一1)3), 大槻 俊輔1), 松本 昌泰1)

1)広島大学病院脳神経内科〔〒734-8551 広島市南区霞1-2-3〕
2)独立行政法人国立病院機構東広島医療センター神経内科〔〒739-0041 東広島市西条町寺家513〕
3)翠清会梶川病院神経内科〔〒730-0046 広島市中区昭和町8-20〕

症例は36歳の男性である.32歳時に橋梗塞を発症し,その時点で両側視床内側の陳旧性梗塞を指摘された.36歳時に意識障害,四肢麻痺を呈し,脳底動脈閉塞による小脳,橋を中心とした脳幹に多発性梗塞を再発した.胸部造影CTで左上大静脈遺残(persistent left superior vena cava;PLSVC)をみとめ,右上大静脈(right superior vena cava;RSVC),PLSVC,その他縦隔内の静脈の著明な拡張と静脈血栓がみとめられた.PLSVCは左心房へ還流しており,本例は縦隔内の静脈血栓によるPLSVCを介した奇異性脳塞栓症と診断し,抗凝固療法をおこなった.過去にPLSVCを介した奇異性脳塞栓症の報告は無く,文献的考察を加えて報告する.
Full Text of this Article in Japanese PDF (776K)

(臨床神経, 48:492−496, 2008)
key words:若年発症, 脳梗塞, 奇異性脳塞栓症, 左上大静脈遺残

(受付日:2007年12月14日)