臨床神経学

症例報告

カベルゴリン服用中に心臓弁膜症を合併したパーキンソン病の2例

佐藤 卓1), 菊池 昭夫1)4), 尾上 紀子2), 平本 哲也2), 近江 三喜男3), 小野寺 淳一1)5)

1)国立病院機構仙台医療センター神経内科〔〒983-8520 仙台市宮城野区宮城野2-8-8〕
2)同 循環器内科
3)同 心臓血管外科
4)現 東北大学神経内科
5)現 医療法人松田会松田病院神経内科〔〒981-3217 仙台市泉区実沢字立田屋敷17-1〕

症例1は79歳女性である.2003年6月よりパーキンソン病(PD)の診断でカベルゴリン4 mgを内服した.2005年11月呼吸困難が出現した.心拡大,肺うっ血と胸水貯留があり,心エコーにて心臓弁膜症をみとめた.原因と思われるカベルゴリンをプラミペキソールに置換し,利尿剤とアンギオテンシン変換酵素阻害剤(ACEI)投与で症状は消失し,3カ月後には心臓弁膜症も消失した.症例2は74歳女性.2001年4月PDを発症.レボドパ・カルビドパ合剤700 mg,カベルゴリン4 mg投与中の2005年4月息切れが出現した.心エコー上心臓弁膜症をみとめ,利尿剤投与で心不全は改善した.しかし2005年11月よりふたたび心不全が悪化し,肺水腫,下肢浮腫も呈した.2006年1月の心エコーでは心臓弁膜症が悪化しており,肺高血圧も合併した.ACEIを追加投与し,カベルゴリンをプラミペキソールに置換したが,悪性症候群,DIC(disseminated intravascular coagulation)を併発し死亡した.ドパミンアゴニストによる心臓弁膜症の合併には常に注意が必要で,定期的な心雑音のチェックや心エコー検査が重要である.また麦角剤での治療中に心不全徴候が出現したばあい,麦角剤の中止または非麦角剤への切りかえが重要である.
Full Text of this Article in Japanese PDF (445K)

(臨床神経, 48:486−491, 2008)
key words:パーキンソン病, 心臓弁膜症, カベルゴリン, ドパミンアゴニスト, 心エコー

(受付日:2007年10月7日)