臨床神経学

症例報告

遷延性意識障害から回復したサイトメガロウイルス脳炎うたがいの1例

豊田 元哉, 飯島 献一, 高橋 一夫, ト蔵 浩和, 山口 修平

島根大学医学部内科学講座(内科学第三)〔〒693-8501 島根県出雲市塩冶町89-1〕

症例は50歳女性である.頭痛,ふらつきの後,錯乱症状,発熱,意識障害が出現し入院した.入院時,錐体路徴候,髄膜刺激徴候,上肢ミオクローヌスをみとめた.検査にて肝障害,炎症反応,血清サイトメガロウイルス(以下CMV)IgM抗体の上昇をみとめた.髄液蛋白が増加し(67 mg/dl),MRI・DWIにて白質に高信号域をみとめた.アシクロビル(Acv),ガンシクロビル(Gcv)投与,ステロイドパルス療法を行ったが,痙攣重積発作をきたした後,約2カ月間の意識障害が続いた.しかしGcvの継続投与により徐々に意識レベルおよび運動障害の改善をみとめ,ほぼ自立したADLとなった.2カ月間の遷延性意識障害を来たしたCMV脳炎うたがい症例に対して,Gcvによる持続的治療が有効であった.
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(臨床神経, 48:481−485, 2008)
key words:サイトメガロウイルス脳炎, ガンシクロビル, 遷延性意識障害

(受付日:2007年1月29日)