臨床神経学

原著

Tracheostomy positive pressure ventilation(TPPV)を導入したALS患者のtotally locked-in state(TLS)の全国実態調査

川田 明広1), 溝口 功一2), 林 秀明1)

1)都立神経病院脳神経内科〔〒183-0042 東京都府中市武蔵台2-6-1〕
2)独立行政法人国立病院機構静岡てんかん・神経医療センター神経内科〔〒420-8688 静岡県静岡市葵区漆山886番地〕

TPPVを導入したALS(TPPV・ALS)患者のtotally locked-in state(TLS)について全国調査をおこなった.調査時点709名のTPPV・ALS患者中89名(13%)がTLSであった.臨床経過が確認されたTLS患者41名は,ALSの神経病院分類で,29名(70%)が6カ月間内に四肢,橋・延髄(球),呼吸および外眼運動系の4つの随意運動系のうち2つ以上が麻痺した複数同時麻痺型で,28名(70%)はTPPV開始後5年以内にTLSになった.また最後に麻痺した随意運動系は,37名(90%)が外眼運動系であった.神経病院TLS例の臨床経過の特徴は,全国調査の結果に合致していた.
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(臨床神経, 48:476−480, 2008)
key words:筋萎縮性側索硬化症, totally locked-in state(TLS), tracheostomy positive pressure ventilation(TPPV), 随意運動系, 呼吸運動系麻痺

(受付日:2007年12月7日)