症例報告
重症筋無力症に合併した難治性バセドウ眼症の1例
前田 憲吾1）, 久米 真司2）, 西尾 善彦3）, 前田 士郎2）, 西田 保裕4）, 鈴木 幹男5）, 仲口 孝浩6）, 川端 徹1）7）, 橋本 修7）, 久永 卓8）, 柏木 厚典3）, 安田 斎1）
1）滋賀医科大学神経内科〔〒520-2192 滋賀県大津市瀬田月輪町〕
2）同 腎臓内科
3）同 代謝内分泌内科
4）同 眼科
5）同 耳鼻咽喉科
6）同 放射線科
7）長浜赤十字病院神経内科
8）独立行政法人国立病院機構 紫香楽病院神経内科
重症筋無力症に合併した難治性バセドウ眼症の1例を報告した．患者は53歳の女性で，両側の著明な眼球突出，眼球結膜の充血と浮腫，外眼筋麻痺を呈した．血漿交換・副腎ステロイドのパルス療法・局所投与・放射線治療にもかかわらず，眼症状は軽減せず左視神経障害が生じたため，眼窩減圧術を左眼に施行した．免疫療法により手術後から両眼の結膜所見は改善したため，右眼は経過観察とした．5年後，術眼の眼球運動は正常であったが，非術眼は眼球突出と外眼筋麻痺を残した．ステロイドに速効しない視神経障害や外眼筋麻痺をともなう高度のバセドウ眼症には眼窩減圧術を考慮するべきと考えられた．
(臨床神経, 46：266−269, 2006)
key words：甲状腺眼症, 重症筋無力症, 外科治療, 血漿交換
（受付日：2005年6月6日）
