臨床神経学

症例報告

髄膜炎と無症候性多発性脱髄斑を主徴とした小児多発性硬化症の1例

吉原 章王, 山野井 貴彦, 高橋 早苗, 山本 悌司

福島県立医科大学医学部神経内科〔〒960-1295 福島市光が丘1番地〕

症例は13歳女児である.2000年5月に髄液細胞増多をともなう右視神経炎で発症した.同年6月に右視神経炎が再燃し,頭部MRI上,右前頭葉,頭頂葉白質に多発する高信号域をみとめた.2002年1月,項部痛,微熱,全身倦怠感,髄膜刺激徴候を示し,髄液検査では単核細胞増多(33/mm3)とミエリン塩基性蛋白の上昇(17.7ng/ml)をみとめた.頭部MRIでは,2000年6月にみられた大脳白質病変の他に,新たに延髄,橋,両側小脳脚,小脳白質に多数の無症候性脱髄斑による異常信号域をみとめた.本症例は髄膜炎症状以外には神経学的巣症状をみとめなかった点で,まれな小児MSであると考え報告した.

(臨床神経, 43:98−101, 2003)
key words:多発性硬化症, 急性散在性脳脊髄炎, 視神経炎, 視覚誘発電位

(受付日:2002年8月9日)