臨床神経学

症例報告

化学療法で著明な改善を示した中枢神経血管内悪性リンパ腫の1例

青山 雅彦1), 青木 智子1), 松浦 豊1), 山野井 貴彦1), 渡辺 亜貴子1), 斎藤 直史1), 本間 真理1), 石川 敏仁2), 児玉 南海雄2), 山本 悌司1)

1)福島県立医科大学医学部神経内科〔〒960-1295 福島市光が丘1番地〕
2)福島県立医科大学医学部脳神経外科

54歳の男性が,胃悪性リンパ腫の治療1年後に両側感音難聴を来した.更に1年後に両下肢麻痺と感覚障害が出現した.血清LDHおよび可溶性IL-2レセプターが高値であった.副腎皮質ステロイド薬で一時改善したが,行動異常,意識障害を来した.頭部MRIで多発性梗塞様病変をみとめた.血管内悪性リンパ腫(IML)がうたがわれ,開頭脳生検によりIMLと診断された.CHOP療法で意識レベル,聴力とも改善したが,5ヵ月後死亡した.CHOP療法での聴力改善から,難聴が本症例でのIMLの初発症状と推測された.胃を原発としたリンパ腫が血管外への浸潤性を消失し,血管内に蓄積した可能性が考えられた.

(臨床神経, 43:6−11, 2003)
key words:血管内悪性リンパ腫, 難聴, 脳生検, CHOP療法

(受付日:2002年7月18日)