臨床神経学

依頼総説

側頭葉てんかんにおける記憶障害

向野 隆彦

九州大学病院脳神経内科

側頭葉てんかんは,様々な認知機能障害を呈することが知られている.その中でも記憶障害は,患者の訴えとしても多い.記憶障害には,神経心理検査で異常を認めるような海馬性健忘と呼ばれるものと,一般的な検査で異常を検出できないような,加速的長期健忘や自伝的記憶障害などがある.記憶障害には脳の構造的異常や発作間欠期てんかん性放電,薬剤や心理状態などが複合的に関与していると考えられている.根本的な治療法は乏しいが,環境整備やリハビリテーションなど介入する余地もある.本総説では,側頭葉てんかんに見られる記憶障害のタイプと病態,介入方法に関して概説する.
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(臨床神経, 64:453−459, 2024)
key words:側頭葉てんかん,記憶障害,認知機能障害,加速的長期健忘,病態

(受付日:2023年5月9日)