編集委員

編集委員会委員長の挨拶

編集委員

 就任にあたり、この時代の学術雑誌の意味を少し考えたいと思います。最近、学術雑誌を一号眼を通されたことはあるでしょうか?テレビからYouTubeの時代に移っているように、情報は“見たい物だけ見る”時代です。学術情報も、雑誌の通読ではなく、検索エンジンにより“見たい物だけを見る”ことが出来るようになりました。この検索エンジンが情報を構築する時代の中で、雑誌の時代も終わるのでしょうか。本誌の幹事は、掲載論文をすべて読みチェックします。私も幹事として、何号かの本誌に眼を通しました。本誌を通読しますと、症例に寄り添った内容で、専門分野以外の領域での、自分の知識の盲点に気づかされました。東浩紀氏は“弱いつながり”という本の中で、ネットでの繋がりを強い繋がりとし、リアルでの繋がりを弱い繋がりとして紹介し、リアルでの弱い繋がりの中に、“偶然による知の広がり”があると説いています。昔は、難しい症例は、総説論文から、孫引きを繰り返し類似例の論文を探していました。そうしますと、リアルで探しますので、偶然その号に掲載している論文も眼に入ります。引っ越しの荷造りが片付かないのと一緒で、気づくと、どんどん寄り道し、読みふけっていました。こうして得られる弱い繋がりには“偶然による知の広がり”を経験する一種の高揚感がありました。一方、検索エンジンは、一瞬で深い知識を提示してくれます。これは、強い繋がりといえます。しかし、その知識は検索語に規定され、絶対に“見たいものしか見えません”。知識は、検索語に誘導され狭く限定される危険があります。学問とは、先人の知に立ち、新たな知の領域を広げることです。これには、領域外への弱い繋がりが重要です。しかし、今や、雑誌でも領域の細分化がすすみ、一号で、広い視野を見渡すのが難しくなってきています。本誌は、各領域の専門家に編集委員を依頼しています。症例に寄り添った雑誌です。本誌を通読することで、読者が日々遭遇される患者さんの臨床に役立つ“弱いつながり” を広げ“偶然による知の広がり”を生み出せるよう、読者、投稿者に寄り添った編集を心がけたいと考えています。思考は言語に支配されます。母国語である本誌は、皆さんの思考に短時間で直接的に訴え、これを叶えることが出来ます。これを叶えるべく、編集委員の皆様と共に、本誌の編集に励んでいきたいと思います。

(小野寺 理)

編集委員

編集委員長
小野寺 理
編集副委員長
三澤 園子
幹事
石浦 浩之、漆谷 真、杉江 和馬
編集委員
今井 富裕、木下 真幸子、古賀 政利、櫻井 圭太、柴田 護、下畑 享良、鈴木 匡子、
辻野 彰、坪井 義夫、中嶋 秀人、新野 正明