臨床神経学

症例報告

小脳歯状核出血とともにパーキンソン病による静止時振戦が消失した後Holmes振戦が出現した1例

中村 匡宏, 磯野 理, 那須 徹也, 日沼 雄二, 中村 紀子

公益社団法人信和会京都民医連あすかい病院神経内科

症例は71歳男性.2年前に発症したHoehn-Yahr III度のパーキンソン病患者.右上肢に6〜7Hzの静止時振戦を認めていた.突然のめまいで受診.頭部CTで右小脳歯状核出血を認め,右上肢の静止時振戦は消失した.第6病日の頭部MRIで右歯状核−赤核−視床路のWaller変性を認めた.発症5カ月頃よりHolmes振戦が右上肢に出現した.Holmes振戦はL-dopa増量で改善した.小脳病変でのパーキンソン病による静止時振戦の消失とHolmes振戦の発症の報告は稀であり,さらに歯状核−赤核−視床路の変性を画像で捉えた報告はなく,その病態に小脳歯状核および歯状核−赤核−視床路の変性および黒質−線条体経路が関与したことが示唆された.
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(臨床神経, 64:185−189, 2024)
key words:パーキンソン病による静止時振戦,小脳歯状核出血,歯状核−赤核−視床路

(受付日:2023年10月16日)