臨床神経学

症例報告

精神症状で発症し,頭部MRIにてびまん性深部白質病変を呈した橋本脳症の1例

高橋 なおみ1)*, 鹿間 幸弘1), 川原 光瑠2), 岡部 裕真1), 栗村 正之1), 太田 康之2)

1)公立置賜総合病院神経内科
2)山形大学大学院医学系研究科内科学第三講座神経学分野

症例は51歳男性.X-1月,急性の意識障害と精神症状で発症し,X月当院精神科に入院した.頭部MRIでびまん性白質病変を認め当科に紹介された.123I-IMP-SPECTでは前頭葉中心に広範な脳血流低下を認めた.抗Tg抗体,抗TPO抗体,抗NAE抗体が陽性であり橋本脳症と診断した.ステロイドパルス療法,ステロイド後療法,免疫グロブリン大量静注療法に反応し,症状,画像所見の改善を認めた.橋本脳症では急性の意識障害や精神症状で発症した場合,辺縁系脳炎類似のMRI所見を呈することが多いとされるが,本例はびまん性白質病変を呈し鑑別診断を考える上で臨床的に重要と思われた.
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(臨床神経, 64:171−175, 2024)
key words:橋本脳症,急性脳症型,びまん性深部白質病変,抗NAE抗体,精神症状

(受付日:2023年7月13日)