臨床神経学

依頼総説

炎症性および非炎症性脊髄症の鑑別診断

安藤 哲朗1)*

Corresponding author: 亀田メディカルセンター脳神経内科〔〒296-8602 千葉県鴨川市東町929番地〕
1)亀田メディカルセンター脳神経内科

炎症性脊髄症と非炎症性脊髄症の鑑別は難しいことがある.年齢と性,発症のスピードと経過,全身症状,脊髄および脳MRI,自己抗体,髄液所見などの臨床情報が必要である.特に発症のスピードが鑑別に重要である.炎症性脊髄症は通常急性/亜急性経過をとるのに対して,脊髄梗塞は超急性経過,脊髄髄内腫瘍などは慢性進行性の経過をとることが多い.脊髄硬膜動静脈瘻は,通常は慢性進行性だが,初期には症状の変動があり,急性発症にみえる場合がある.炎症性脊髄症の診断には,圧迫性脊髄症を確実に否定することが必要である.かりに確定診断ができなくても,治療経過の中で適宜再検討が必要である.
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(臨床神経, 63:806−812, 2023)
key words:多発性硬化症,視神経脊髄炎,炎症性脊髄症,脊髄梗塞,脊髄硬膜動静脈瘻

(受付日:2023年7月23日)