臨床神経学

症例報告

抗VGKC複合体抗体関連辺縁系脳炎を合併した胸腺腫関連全身型重症筋無力症の1例

長沼 亮滋1)*, 網野 格1), 宮ア 雄生1), 秋本 幸子1), 新野 正明2), 南 尚哉1), 本間 直健3), 菊地 誠志1)

Corresponding author: 国立病院機構北海道医療センター脳神経内科〔〒063-0005 北海道札幌市西区山の手5条7丁目1番1号〕
1) 国立病院機構北海道医療センター脳神経内科
2) 国立病院機構北海道医療センター臨床研究部
3) 国立病院機構北海道医療センター呼吸器外科

症例は54歳女性.胸腺腫関連全身型重症筋無力症にて当科通院中であった.筋無力症状の増悪に対し入院加療中,初発の意識消失発作を生じ,その後見当識障害や健忘が持続した.ステロイドパルス療法を行ったところ症状は改善し,自己抗体を検索したところ抗VGKC複合体抗体陽性辺縁系脳炎の診断となった.抗VGKC複合体抗体陽性辺縁系脳炎は3分の1が胸腺腫を合併するなど傍腫瘍性神経症候群としての側面を有しており,本症例では後年になり胸腺腫の再発を疑う腫瘤が指摘された.胸腺腫症例の中枢神経症状では抗VGKC複合体抗体の関与を,抗VGKC複合体抗体陽性例では胸腺腫の再発や増悪を考慮する必要がある.
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(臨床神経, 63:754−759, 2023)
key words:抗VGKC複合体抗体,辺縁系脳炎,胸腺腫,重症筋無力症

(受付日:2023年6月15日)