臨床神経学

総説

COVID-19後遺症としての認知機能障害―病態機序と治療の展望―

下畑 享良1)*

Corresponding author: 岐阜大学大学院医学系研究科脳神経内科学分野〔〒501-1194 岐阜県岐阜市柳戸1-1〕
1) 岐阜大学大学院医学系研究科脳神経内科学分野

COVID-19後遺症として認知機能障害が生じることが明らかになっている.危険因子としては,高齢者,重症感染,嗅覚障害の長期間の持続が報告されている.またCOVID-19はアルツハイマー病の危険因子となることや,軽症感染でも視空間認知障害を呈しうることも報告されている.複数の病態機序が指摘されているが,治療に直結する可能性があるSARS-CoV-2ウイルスの持続感染が注目されている.持続感染は,スパイク蛋白による神経毒性,サイトカインによる神経炎症の惹起,細胞融合などを介して認知機能障害を引き起こす可能性がある.予防・治療としてはワクチン接種,メトホルミン,抗ウイルス薬などが期待されている.
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(臨床神経, 63:725−731, 2023)
key words:COVID-19,認知機能障害,アルツハイマー病,持続感染,治療

(受付日:2023年7月10日)