臨床神経学

症例報告

水痘が神経症状後に出現した水痘・帯状疱疹ウイルス横断性脊髄炎および馬尾症候群

島津 匠生1)2)*, 安富 大悟1), 伊藤 規絵1), 千葉 進1), 南部 明民3)

Corresponding author: 手稲家庭医療クリニック〔〒006-0812 札幌市手稲区前田2条10丁目1-10〕
1) 札幌西円山病院神経内科
2) 手稲家庭医療クリニック
3) 中田泌尿器科病院

症例は74歳男性である.下肢の脱力および排尿困難を発症し,3日後に全身の水疱が出現した.脊椎MRIではTh12〜L1レベルの髄内および馬尾に造影効果を認めた.血清および脳脊髄液中の水痘・帯状疱疹ウイルス(varicella-zoster virus,以下VZVと略記)-IgG抗体価の著明な上昇があり,また脳脊髄液中のVZV-IgM産生を認めた.VZV横断性脊髄炎・馬尾症候群とそれに続発した水痘と診断し,抗ウイルス薬およびステロイドを投与した.2ヶ月後に筋力低下や排尿障害はほぼ完全に回復した.本症例では神経節に潜伏していたVZVが再活性化して横断性脊髄炎を発症し,その後血流を介して全身に播種することで水痘を発症したと示唆された.
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(臨床神経, 63:637−642, 2023)
key words:水痘・帯状疱疹ウイルス,水痘,再罹患,横断性脊髄炎,馬尾症候群

(受付日:2022年12月28日)