臨床神経学

症例報告

尿閉を主徴とした頸椎症性脊髄症の1例

西尾 慶之1)*, 高根 紘希1), 長谷川 節1), 井上 聖啓1), 本田 和也2)

1)東京慈恵会医科大学神経内科〔〒105-8471 東京都港区西新橋3-19-18〕
2)福島県立医科大学泌尿器科
現 東北大学大学院医学系研究科高次機能障害学〔〒980-8575 仙台市青葉区星陵町2-1〕

症例は58歳男性である.交通外傷の約1年後から排尿困難,残尿感が出現し徐々に増悪した.排尿障害出現の5カ月後,冠動脈カテーテル検査で長時間の頸部伸展位をとった直後から左上肢のしびれ,両側膝以下の灼熱感が出現し,尿閉にいたった.Urodynamic studyで排尿筋−外尿道括約筋協調不全をみとめた.高度の排尿障害が持続し間歇自己導尿が導入されたが,頸部カラー装着および安静により排尿障害の改善をみとめた.頸椎MRIでC5/6椎間板高位の脊髄圧迫所見とC5椎体高位の髄内信号変化をみとめた.本症例は,頸髄病変において排尿障害が下肢の運動・感覚障害の程度と解離して重症化しえることを示している.

(臨床神経, 45:226−229, 2005)
key words:頸椎症性脊髄症, 排尿障害, 排尿筋―外括約筋協調不全

(受付日:2004年5月25日)