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神経内科の主な病気

(症状編) 多発性硬化症(MS)視神経脊髄炎(NMOSD)MOG抗体関連疾患(MOGAD)

多発性硬化症(Multiple Sclerosis:MS)

 多発性硬化症(Multiple Sclerosis:MS)は、中枢神経系が障害される自己免疫性疾患です。全国で患者さんの数は20,000人程度と考えられています。
 髄鞘と呼ばれる神経線維を包む被覆が炎症を起こし、時間的・空間的に病変が多発するのが特徴です。この炎症により髄鞘が損傷し、神経の信号伝達が阻害されることで様々な症状が現れます。
 MSは患者さんによって症状や経過が異なりますが、手足のしびれ、歩行困難、視力障害、疲労感、筋力低下、排尿障害などがみられます。認知機能の低下が起こる場合もあります。MSの診断には、問診や診察に加え、脳や脊髄のMRI(核磁気共鳴画像)、血液検査、脳脊髄液検査などが重要です。
 急性期(再発時)には、炎症を抑えるステロイドパルス治療が行われます。まれに血液浄化療法が行われることがあります。再発時の重症度や再発頻度の軽減、進行抑制の目的で疾患修飾薬(インターフェロンβ、グラチラマー酢酸塩、フィンゴリモド塩酸塩、ナタリズマブ、フマル酸ジメチル、オファツムマブ、シポニモドフマル酸)が使用されます。どの治療を選ぶかについては医師と相談し、個人に最適な治療プランを選択します。病気の進行を抑え、再発のリスクを減らすために治療薬の継続、定期的な受診と検査、症状進行の有無の確認、治療薬による副作用のモニタリングが重要です。
 MSは慢性的な疾患ですが、早期の診断と適切な治療により、症状の進行を遅らせ、生活の質を向上させることが可能です。また、リハビリテーションや適切な情報サイトの活用も有用です。

難病情報センター

多発性硬化症で検索してください。医療費助成制度、治験情報なども参考になります。
https://www.nanbyou.or.jp/

MSキャビン

MSキャビンでは患者さん向けに分かりやすく病気のことをまとめた小冊子や書籍を刊行しています。
https://www.mscabin.org/

視神経脊髄炎(Neuromyelitis Optica Spectrum Disorder;NMOSD)

 視神経脊髄炎(Neuromyelitis Optica Spectrum Disorder:NMOSD)は、中枢神経の主に視神経や脊髄に強い炎症が生じ、神経の機能が著しく損なわれます。病態にはアクアポリン4(AQP4)抗体、補体の活性化、血液脳関門の破綻などが関与し、中枢神経のアストロサイトと呼ばれる細胞が障害されます。
 NMOSDの特徴的な症状は、視神経障害による急激な視力の低下や視野の欠損、脊髄障害による運動麻痺や感覚障害などです。具体的には片目または両目の視力低下、色の見え方の変化、手足のしびれ、痛み、感覚の鈍さ、筋力の低下、排尿障害、意識障害などがみられます。未治療の場合は失明や車いす生活に至ることがあります。
 診断には、血液中のAQP4抗体の測定が必要です。2006年頃までは視神経脊髄型の多発性硬化症(Optic-spinal form MS:OSMS)と言われていました。全国で患者さんの数は5,000人程度いると考えられています。
 急性期の治療は、ステロイドパルス療法と血漿浄化療法が選択されます。ステロイドパルス療法と血漿浄化療法の併用による完全回復は、症状出現から数日以内に血漿浄化療法を実施すると40%だったとの報告があります。症状の程度が強い場合は、早期の血漿浄化療法導入が勧められます。ステロイド抵抗性の視神経炎の急性期には免疫グロブリン療法(IVIG)も適用されることがあります。
 再発予防には、従来経口ステロイド剤や免疫抑制剤が用いられていましたが、近年は生物学的製剤(エクリズマブ、サトラリズマブ、イネビリズマブ、リツキシマブ、ラブリズマブ)も適用されることが増えています。NMOSDは個別の病状によって治療法が異なる場合もありますので、適切な治療計画は医師との相談に基づいて行います。早期の診断と適切な治療は、症状の緩和や再発の予防に役立ちます。

MOG抗体関連疾患(Myelin Oligodendrocyte Glycoprotein Antibody Associated Disease;MOGAD)

 臨床的に視神経脊髄炎(NMOSD)と考えられた患者さんの中にAQP4抗体が陰性のグループがあり、共通してMOG抗体が検出されたことがきっかけで新しい疾患概念として近年提唱されました。全国で患者さんの数は1,700人程度と考えられています。2023年1月に国際パネルによる診断基準が提示されています。本邦でも最初の全国調査の結果が2022年に報告されています。
 MOGADの症状は多様であり、視神経炎、脊髄炎、急性散在性脳脊髄炎、髄膜炎、皮質性脳炎などが生じ、症状は個人によって異なります。MOGADの診断には、神経学的な診察による評価、脳脊髄液の検査、MRI、MOG抗体の検査などが重要です。MOG抗体が低力価で陽性、あるいは髄液検査でのみ陽性の時は、アクアポリン4(AQP4)抗体が陰性でいくつかの特徴的な症状が認められる場合にMOGADと診断されます。時にMSとの鑑別が重要となりますが、両側視神経炎、視神経の腫脹、長大な脊髄病変などがあり、髄液オリゴクローナルバンドが陰性で、MOG抗体が高力価陽性であればMSの診断基準を満たしていてもMOGADと診断するのが妥当です。
 急性期のステロイドパルス治療に対する反応性は良く、多くは後遺症なく回復します。その後約半数の患者さんで再発が認められます。再発を繰り返す場合の再発予防薬は免疫抑制薬や経口ステロイド剤がよく用いられます。現在複数の再発予防薬の治験が実施されています。

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