MRI検査の流れ
MRI装置は穴の開いた大きな磁石です。このため検査室に入ると、まず体の中に金属を有していたり(手術などで金属が体の中に入っているか)、体に金属がついていないかなどの質問を受け、安全な撮像が出来ることが確認された後に、検査着に着替えるように言われます。これは、あなた方に大きな磁石の中に入っていただくことで、あなた方の体を構成する水素原子が小さい磁石として働くようになる性質を用いて、いろいろな画像が撮れるというMRIの原理の為に、体に金属が入っている方の一部はMRI撮像が出来ず、また、メイクや洋服などについている金属がMRI検査の障害になるためです。一方、MRIで使われる磁場の強さは通常の人体には害はありませんので、安心して検査を受けてください。
MRIの機械はトンネルの様な穴の中にあなたが横たわったベッドごと入るようになっています(図1)。撮影にはどのような画像が必要かによって時間は異なりますが、およそ10分から1時間程度が必要です。撮影に際して造影剤が必要なときに、その造影剤を経静脈投与(注射か点滴で血管の中にMRI用の造影剤を入れます。全ての検査で必要になるわけではありません。)する以外は痛い思いをすることはありません。ただ、撮像中は機械が「カタカタ」、「ゴンゴン」などと比較的大きな音を立てるので、耳栓をしていただくこともあります。また、CTやレントゲンと比べ1種類の画像の撮影には数十秒から数分と、長くかかります。撮影中に撮影部位が動いてしまうと画像がぼやけてしまうので、撮影前に通常「頭を動かさないようにしてください」などと指示されます。
図.1 MRI装置
どんなときにMRIを撮るのか
一概に「この病気でMRIは必ず撮ります」とはいえませんが、脳あるいは脊髄の病気で局所(ある一定の場所にとどまっている病巣)の状態や広がりを評価したい場合や、脳の萎縮を評価したい場合、いろいろな病気が考えられる中で診断に役に立つ場合(鑑別診断)、治療の評価や決定に役に立つ場合などに広く用いられています。
特に、CTと異なり、血管の走行や血流の評価(この撮影法を通常の脳の形を見るMRIと区別して、MRA(磁気共鳴血管撮影:Magnetic Resonance Angiography)と言うこともあります)に関しては、多くの場合、造影剤を用いずに評価できるので脳血管の最初の評価に多く用いられます。また、脊髄の病変に関してもCTより情報量が多いことがほとんどなので、日常的に用いられています。
MRI検査が出来ない場合
MRI装置は大きな磁石ですので、金属を含む物が体内にあると検査が出来ない場合があります。以下のような方は、MRI検査を勧められたときに必ず申し出てください。
(1) MRIを受けることが出来ない方
- 心臓ペースメーカーや除細動器の入っている方
- 人工内耳の入っている方
- 可動型の義眼を装着している方
- 神経刺激装置の入っている方
(2) MRIを受けられない場合がある方
- 脳動脈瘤の手術を受け金属クリップを入れている方(特に古い物で型番不明の場合)
- 金属製心臓人工弁を入れている方(古い物や、特定の会社の物)
- 金属が体内にある可能性のある方(眼に金属粉等が入っている可能性のある方など)
- 妊婦又は妊娠している可能性がある方
- 血管内ステントなども含め、手術の既往がある方
- 入れ墨(染料に金属を含む)や、一部のメイク(マスカラやアイラインは金属(酸化鉄)が入っている、またラメは金属を含むことがあるため)をしている方
- 閉所恐怖症のある方
また、歯の金属は問題がないことが多いですが、インプラント、特に脱着式のものを装着されている場合、検査を受けられなかったり、受けられても画像がゆがみ詳細な評価が出来ない場合があります。また貼り薬は金属を含んでいる物があるので、撮影時には剥がしていただきます。