臨床神経学

依頼総説

精神科との境界領域について:機能性神経障害を中心に

園生 雅弘1)*

Corresponding author: 帝京大学脳神経内科〔〒173-8605 板橋区加賀2丁目11番1号〕
1) 帝京大学脳神経内科

日本の神経学は諸外国と異なり精神神経学の精神科と神経科への分離から出発したのではなく,それが現在の脳神経内科のあり方に陰を落としている.機能性神経障害(functional neurological disorders,以下FNDと略記,ヒステリー)は脳神経内科と精神科をまさに繋ぐ疾患だが,古代から存在し,神経学の源流ともなったcommon diseaseである.FNDの診断は,除外診断によって行うのではなく,精神科的原因・心理学的特徴から診断するのでもなく,神経症候そのもの(=FNDの陽性徴候)を元に,検査は最低限としてなるべく早期に積極診断すべきである.この考えは最新の精神科の疾病分類DSM-5においても支持された.様々な陽性徴候が記載されている.脳神経内科医の診療そのものが治療ともなる.
Full Text of this Article in Japanese PDF (1526K)

(臨床神経, 63:135−144, 2023)
key words:機能性神経障害,ヒステリー,機能性筋力低下,陽性徴候,認知行動療法

(受付日:2022年11月6日)