臨床神経学

症例報告

著明な馬尾腫大を呈した悪性リンパ腫の80歳女性例

城野 誉士1)*, 山口 滋紀1), 伊東 毅1), 佐々木 芽衣1), 金塚 陽一1), 林 竜一郎1)

Corresponding author: 横浜市立市民病院脳神経内科〔〒221-0855 神奈川県横浜市神奈川区三ツ沢西町1-1〕
1) 横浜市立市民病院脳神経内科

症例は80歳女性.右下肢痛,進行性の両下肢筋力低下を主訴に入院となった.両下肢筋力低下,右L2以下の触痛覚鈍麻,両下肢腱反射消失,膀胱直腸障害を認めた.MRIで造影効果を伴う著明な馬尾腫大を呈した.髄液検査で細胞数上昇,糖の低下,蛋白上昇を認めた.細胞診でclass V,フローサイトメトリーでB細胞性のクロナリティを検出し,中枢神経原発悪性リンパ腫の診断に至った.馬尾病変の悪性リンパ腫は稀でその診断に高侵襲の馬尾生検が必要となり有用なバイオマーカーの確立が待たれる.侵襲が問題になる場合に髄液細胞診,フローサイトメトリー,バイオマーカーの併用で生検を行わず早期治療に繋げられる可能性がある.
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(臨床神経, 63:31−36, 2023)
key words:馬尾腫大,中枢神経原発悪性リンパ腫,フローサイトメトリー,髄液細胞診,バイオマーカー

(受付日:2022年9月1日)