臨床神経学

短報

片頭痛発作に続く脳卒中様症状で発症した単純ヘルペス脳炎の1例

山本 萌乃1), 滑川 将気1), 石川 正典2), 渡邊 浩之2), 小宅 睦郎1), 藤田 信也1)*

Corresponding author: 長岡赤十字病院神経内科〔〒940-2085 新潟県長岡市千秋2丁目297-1〕
1) 長岡赤十字病院神経内科
2) 長岡中央綜合病院神経内科

症例は,片頭痛持ちの23歳女性.3日間の片頭痛発作後に左上肢麻痺が出現し,頭部MRI拡散強調画像(DWI)で右大脳白質に高信号病変を認めた.38°C台の発熱があったが,髄液所見は正常だった.第4病日に左片麻痺が増悪し,病変は右中心後回と両側島皮質に広がった.第6病日の髄液細胞数は54/µlと軽度上昇し,髄液HSV-DNA陽性で,単純ヘルペス脳炎(herpes simplex encephalitis,以下HSEと略記)と診断した.早期からのアシクロビルとステロイドパルス療法で,症状は改善した.片頭痛発作が先行したHSEで,症状や画像所見,髄液所見からは脳卒中を思わせる極めて非典型的な発症経過をたどったが,感染源不明の高熱の合併が早期診断に重要と考えられた.
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(臨床神経, 62:567−570, 2022)
key words:単純ヘルペス脳炎,片頭痛,脳梗塞,MRI,髄液細胞数

(受付日:2022年1月28日)