臨床神経学

依頼総説

多発性硬化症の治療史と将来展望

中原 仁1)*

Corresponding author: 慶應義塾大学医学部内科学(神経)〔〒160-8582 東京都新宿区信濃町35〕
1) 慶應義塾大学医学部内科学(神経)

多発性硬化症(multiple sclerosis,以下MSと略記)は原因不明の中枢神経系脱髄疾患である.MSの原因はウイルス感染ではないかとする仮説に基づきインターフェロンβが試され,同製剤は史上初の病態修飾薬(disease-modifying drugs,以下DMDと略記)として約30年前に登場した.その後,実験的自己免疫性脳脊髄炎の研究を通じて新たに複数のDMDが登場したが,他方で当該モデルの限界も次第に明らかになり,近年ではMS患者自体の病態に迫り,新たな治療戦略を導こうとする動きが活発になっている.本総説ではMSの治療史を振り返りつつ,今後の展望について纏める.
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(臨床神経, 62:517−523, 2022)
key words:多発性硬化症,治療,病態修飾薬,治療史,将来展望

(受付日:2022年2月12日)