臨床神経学

短報

左上小脳脚近傍の脳出血による同側味覚障害を呈した1例

芝池 由規1)*, 川尻 智士1), 有島 英孝1), 菊田 健一郎1)

Corresponding author: 福井大学学術研究院医学系部門医学領域脳神経外科学分野〔〒910-1193 福井県吉田郡永平寺町松岡下合月23-3〕
1) 福井大学学術研究院医学系部門医学領域脳神経外科学分野

症例は45歳男性.右顔面と右上下肢のしびれを主訴に受診,画像検査にて左橋被蓋上部ならびに左上小脳脚に出血を認めた.第2病日,舌の左側に限局した味覚低下を自覚.電気味覚検査にて舌左側の鼓索神経ならびに舌咽神経領域に味覚障害を認め,中枢性味覚障害と診断した.同症候は上小脳脚付近に存在するとされているpontine taste area(PTA)に至るまでの同側の上行線維が障害されたためと考えられる.本症例はPTA近傍の上小脳脚の出血で同側味覚障害を呈しており,病巣の上小脳脚近傍には対側の交差線維は存在しないことが推察され,PTA近傍の橋上部被蓋で交叉する可能性が示唆される.
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(臨床神経, 62:391−394, 2022)
key words:味覚障害,電気味覚検査,味覚伝導路

(受付日:2021年11月1日)