臨床神経学

症例報告

頸部帯状疱疹罹患後に皮疹を認めた皮膚分節より広範囲な多発脳神経・髄節障害を呈した73歳男性例

本橋 沙耶1), 高橋 潤一郎2)* , 梅原 淳2), 小松 鉄平2), 村上 秀友2), 井口 保之2)

Corresponding author: 東京慈恵会医科大学内科学講座脳神経内科〔〒105-8461 東京都港区西新橋3-25-8〕
1) 東京慈恵会医科大学医学部医学科
2) 東京慈恵会医科大学内科学講座脳神経内科

症例は73歳男性.左頸部C3〜4皮膚分節に帯状疱疹を発症し皮疹は痂皮化したが,その翌日から同側第 V,VII,VIII 脳神経障害と同側C4〜Th1髄節支配筋の脱力が出現した.アシクロビルの静注,ステロイドパルス療法,プレドニゾロンの内服治療後に全症状は消失した.当症例では皮疹を認めた皮膚分節より広範囲な神経障害を認めた点が特徴的であった.その機序として,脳脊髄液を介した波及,同時多発的な無疹性帯状疱疹,上位頸髄神経と脳神経の神経交通枝を介した経神経的な炎症波及が想定された.帯状疱疹の神経障害の多様性は髄膜炎,無疹性帯状疱疹の証明の困難さ,神経交通枝の存在の個体差に起因している可能性がある.
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(臨床神経, 62:380−385, 2022)
key words:水痘・帯状疱疹,多発脳神経・髄節障害,神経交通枝,髄膜炎,無疹性帯状疱疹

(受付日:2021年9月11日)