臨床神経学

症例報告

発症7年前より神経根肥厚を呈していた慢性炎症性脱髄性多発神経炎の65歳男性例

手塚 敏之1)* , 兼古 祐輔1), 山田 翔太1), 木島 朋子1), 田部 浩行1)

Corresponding author: 新潟県立中央病院脳神経内科〔〒943-0192 新潟県上越市新南町205番地〕
1) 新潟県立中央病院脳神経内科

症例は65歳男性.X-3年より下肢の筋力低下を自覚した.その後増悪し,下肢遠位優位の異常感覚も出現したためX年2月中旬に当科外来へ初診した.診察上,下肢遠位優位に四肢筋力低下,感覚障害があり,頸腰椎MRIでいずれも神経根の著明な肥厚を認め,慢性炎症性脱髄性多発神経炎(chronic inflammatory demyelinating polyneuritis,以下CIDPと略記)と診断した.他疾患の経過観察目的で定期的に撮像されたCT画像からは,X-10年より同部位における神経根の肥厚が認められ,徐々に増大していることが確認された.CIDPにおいて,神経根の肥厚は,EFNS/PNS診断基準で診断を支持する所見とされているが,経時的な画像変化については一般的に知られていない.本例は発症前から画像経過を追跡できた貴重な症例であり,ここに報告する.
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(臨床神経, 62:272−276, 2022)
key words:CIDP,脊髄 MRI,神経根肥厚

(受付日:2021年8月8日)