臨床神経学

症例報告

サイトメガロウイルス初感染により脊髄炎を発症した非免疫不全者の30歳男性例

井戸 信博1)*, 加藤 陽久1), 秋庭 優樹1), 齊藤 智子1), 渡邊 江莉1), 相澤 仁志1)

Corresponding author: 東京医科大学病院脳神経内科〔〒160-0023 東京都新宿区西新宿6-7-1〕
1) 東京医科大学病院脳神経内科

両下肢の筋力低下,第4胸髄レベル以下の感覚障害,膀胱直腸障害で発症したサイトメガロウイルス(cytomegalovirus,以下CMVと略記)関連脊髄炎の30歳の男性例である.CMV単核球症を呈し,血清CMVIgMが陽性であり,脊髄MRIで高信号を認めたことから,CMV関連脊髄炎が考えられたが,既往や検査結果から免疫抑制状態ではなかった.非免疫不全者の成人のCMV初感染はCMV 単核球症をきたしうることから,CMV初感染による脊髄炎を発症したと考えた.成人では顕性のCMV感染症は免疫抑制状態で罹患するが,本邦では成人のCMV抗体の保有率が減少しており,今後も非免疫不全者の成人のCMV感染が増加すると予想される.
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(臨床神経, 62:922−927, 2022)
key words:サイトメガロウイルス,初感染,非免疫抑制患者,CMV単核球症,脊髄炎

(受付日:2022年5月19日)